千葉大学、東京大学、愛知県立大学および大阪公立大学らの研究グループは、静止気象衛星「ひまわり8/9号」を用いて、東南アジアの熱帯雨林を一貫して高精度に監視するための新たな観測幾何条件を提案した(掲載誌:Environmental Research Letters)。衛星・地表・太陽の位置関係に由来する観測バイアスを抑え、植生活動の季節変動を安定して捉えられる点が成果である。
東南アジアの熱帯雨林は地球規模の炭素循環を支える重要な生態系であるが、エルニーニョ現象や森林減少の影響を受け、その変動把握が課題となってきた。雲が発生しやすい地域特性から、極軌道衛星では十分な連続観測が難しく、高頻度観測が可能な静止気象衛星の活用が注目されてきた。一方、観測角度の違いが反射率に与える影響が、植生指標の空間的不整合を生む要因となっていた。
研究グループは、空間的に一定の散乱角を保つ観測幾何条件「S-CSA(空間的統一散乱角)」に着目した。散乱角を140度に揃えることで、太陽入射角に対して常に同一条件から地表面を観測する状況が成立し、角度依存性に起因する誤差を低減できる。評価には、可視光と近赤外光から算出される植生指数と、地上観測に基づく光合成由来の二酸化炭素吸収量との相関が用いられた。「ひまわり8/9号」の観測データからS-CSA条件を満たす時刻を選別し、東南アジア全域を対象に解析した結果、従来条件と比べて植生指数と地上観測値の相関が最も高くなり、季節変動を一貫して捉えられることが確認された。
研究グループは、静止衛星による定点観測の特性を活かし、広域でバイアスの少ない植生活動監視を可能にしたと述べている。今後は、他国の静止気象衛星への適用や、世界の熱帯地域での展開を進めるという。