兵庫県立大学らの研究グループは、同県武庫川水系に生息するドジョウ(在来個体群)の中に外来系統由来とみられる遺伝子が入っていることを確認した。兵庫県内では、外来系統の存在を遺伝子レベルで示した報告は限られており、本研究はそうした情報が不足していた武庫川水系の地域情報を補完するものとなる。
研究グループは、同水系で採集したドジョウ類の核DNAの「recombination activating gene 1(rag1)」の部分配列を解析した。rag1は、個体間や系統間で塩基配列の違いが比較的安定して現れる遺伝子として知られ、魚類では在来系統と外来系統を識別する分子遺伝学的指標の一つとして用いられている。
本研究では、採集した64個体を対象に遺伝子型を判定した結果、在来系統アリルのみをもつホモ接合体が53個体、在来系統と外来系統アリルを併せ持つヘテロ接合体が8個体、外来系統アリルのみをもつホモ接合体が3個体確認された。外来系統アリルの頻度は10.9±0.2%であった。一方、国内他地域から導入されている可能性が指摘されてきたキタドジョウおよびカラドジョウのアリルは検出されなかった。また、遺伝子型の出現頻度は、「無作為交配が続いている集団で想定される理論的な比率(ハーディー・ワインベルグ平衡)」から有意に逸脱していた。
研究グループは、この逸脱について、在来系統と外来系統の間で「自由交配を部分的に妨げる機構」が存在する可能性、あるいは「外来系統の導入が比較的最近」で、交雑がまだ十分に進行していない可能性を挙げている。
本研究は、河川生態系における外来系統の侵入や遺伝的撹乱を把握するうえで、分子遺伝学的手法が有効であることを示す一例であり、今後の分布調査や長期的なモニタリングの基礎資料になると研究者は述べている。