ラムサール条約事務局は、河口域の環境が必要とする水について取り上げた「ラムサール技術報告書(RTR)9(河口域の環境のための水需要の決定とその配分の実施)」を生物多様性条約事務局と共同で発表した。これは、河口域環境の水需要を決定する手法を検討するとともに、この手法の開発面で進んでいるオーストラリア、南アフリカ、アメリカでの手法開発の傾向と、河口域の環境に必要な水配分の要件を考察するもの。淡水と海水が混じりあう河口域は、多くの生態系が息づく複雑で独特な環境であり、陸上や大気から溶け込んだ栄養塩や有害物質の分離、洪水や海岸浸食の影響緩和など、様々な機能も果たしている。その生態学的特徴を維持することは河川流域や沿岸域の統合的管理に不可欠で、適切なタイミングで十分な淡水と海水が河口域に供給されることが重要だという。これまで、この水需要については淡水系のみが注目されることが多く、海水にも焦点を当てた今回の技術報告書はきわめて有用だという。