欧州環境庁(EEA)は、EU域内の温室効果ガス排出量取引制度(EU-ETS)の動向と予測に関する2016年版の報告書を公表した。報告によると、2015年にCO2で3億トン分の排出枠のオークションを延期したことなどから、累積の余剰排出枠が2008年以降初めて減少し始めたという。だが、余剰排出枠は依然、EU-ETSの対象となるCO2排出量の1年分に相当する量だという。このため排出枠の売買価格は抑制され、長期的なEU経済の脱炭素化に必要な低炭素技術を導入するだけの十分なインセンティブとして機能していない。EU-ETS制度対象のCO2排出量は、発電燃料としての無煙炭や褐炭の減少と再生可能エネルギーへの移行が主因となり2015年も前年比0.7%減少し、2005年~2015年では合計24%減少した。現行の政策や措置により今後も引き続き減少するが、過去10年間に比べ減少ペースは大幅に鈍化し、13か国では2030年までに排出量増加が予測される。ただし、この予測には、市場安定化リザーブの創設や2021年以後の総排出枠削減案による余剰枠対策は織り込まれていない。