世界気象機関(WMO)は、2021年に発生した異常気象による人的、経済的、環境的な影響を振り返った。同年には数百人の死傷者を出したフィリピンの台風、気温50℃近くを記録し数百人の熱中症死亡者や壊滅的な火災を誘発したカナダの熱波、ドイツとベルギーで200人以上の死者を出した西ヨーロッパの記録的な大洪水、アマゾンの重大かつ長期にわたる洪水などが発生した。しかしながら、スーパーコンピュータと衛星技術により、多くの異常現象を予測・監視することができ、科学的な工夫によって、気候システムに伴う膨大な変化に対する理解が深められた。また、被害の増加に伴い経済的損失は増大しているが、マルチハザード早期警戒システムの改善により、死亡率は大幅に減少している。ただし後発開発途上国や小島嶼開発途上国の気象観測ネットワークには格差があり、ネットワークの強化や人的・技術的資源の動員などが必要である。2022年、同機関は、早期警報システムを強化し、発展途上国の気象・水文観測網の格差を解消し、人命と生活を守るための活動を続けていく。