食物連鎖の頂点に位置する高次捕食者(大型の肉食動物や魚類など)が、人間の影響で減少し、それが生態系崩壊の主因となっているとの研究成果を、生態学者らのチームが「サイエンス」誌上で報告した。生態系では高次捕食者がその系の構造と動態を規定しており、その減少が、食物連鎖の下位の生物へ順次影響を及ぼす「栄養段階カスケード」現象を引き起こすという。これまで、オオカミの絶滅によりシカの食害が進んだ等の一部の例が知られているものの、このような生態系の相互作用についてはあまり理解されていなかった。これは、高次捕食者の増減の効果は実験が出来ず、自然の変化と長期間の記録に頼るしかないことが一因である。2008年に、長期にわたって研究を続けている広範な生態系研究者を集めて栄養段階カスケードに関する会議を開催したところ、多くの生態系で高次捕食者の増減によるトップダウン効果がみられることが分かり、今回の報告につながった。この報告は、生態系の機能を回復するためには大型動物の復活を含む大規模な保護策が必要であることを示唆する点で、自然保護にとって大きな意味があるという。