岡山大学は、中国科学院化学研究所、ドイツベルリン自由大学との共同研究グループが、光合成水分解反応の触媒と類似のモデル化合物を人工的に合成することに成功したと発表した。人工光合成の実現には、可視光を利用した水分解の触媒を人工的に合成することが不可欠である。今回得られたモデル化合物は、タンパク質の代わりに有機化合物に結合しており、天然のものと同じ化学組成と歪んだ椅子型構造を有している。さらに、人工的な酸化剤により天然の触媒と同じように1電子ずつ酸化され、電子スピン共鳴測定により天然の触媒と同じような反応中間体を取ることが判明した。しかし、構造の歪みの位置の違いから、モデル化合物は、水を酸化できていない。このことは、天然触媒と人工化合物の間で異なった歪みの部位が水分解の触媒活性を発現するのに重要であることを示している。今後、水分解の人工触媒の合成が成功すれば、太陽光と水から水素イオンと電子を取りだす「人工光合成」の実現も期待され、さらに水素燃料を作ることも可能になるという。