北海道大学と佐賀大学の研究グループは、海苔の原材料として用いられるアマノリの生活環では、配偶体形成が減数分裂を伴わないアポスポリーによっていること、またアポスポリーが行われる殻胞子嚢が独立した世代(殻胞子嚢体)であること、の2点を新たに解明し、アマノリの生活環が3相性であるという説を提示した。多くの植物や海藻では、胞子体(複相)の細胞が減数分裂を介して配偶体(単相)を形成し、配偶体で形成される配偶子の受精を通じて再び胞子体(複相)を生ずる2相性の世代交代を行っている。1949年のアマノリ胞子体の発見以降アマノリ類でも同様の生活環が考えられてきたが、近年減数分裂が配偶体形成後に行われることが示された。しかし、それが意味する配偶体形成における減数分裂非依存性の生活環制御における特殊性は指摘されてこなかった。このようにアマノリ生活環の理解は不十分であったが、これまでそのことが注目されることもなかった。そのため、同研究グループは、アマノリ類の一種スサビノリの配偶体、胞子体、胞子体上に形成される殻胞子嚢の網羅的遺伝子発現解析や殻胞子嚢から強制的に取り出した細胞の発生過程の観察を行い、上記2点の新事実を明らかとすることでアマノリ類の生活環の全容を解明した。この研究成果はアマノリ類の生活環を正しく認識する契機となり、今後は、紅藻類でのみ見られる特殊な3相性生活環の制御機構や生物学的意義を中心とする新しい紅藻研究が進展すると期待されるという。