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 名大など、南大洋における「人為起源の大気エアロゾルに含まれる鉄」の重要性を解明

発表日:2022.04.15


  名古屋大学、米国のコーネル大学ほか2大学・アメリカ海洋気象庁(NOAA)からなる研究グループは、化石燃料の燃焼等によって大気中に放出される微粒子に含まれる鉄(以下「人為起源鉄」)の「南大洋」における濃度オーダーや寄与の大きさなどを実測・再現することに成功した。鉄は光合成の必須元素であるが、地球全体では水に溶けやすい鉄(可溶性鉄)が不足しつつある。近年では植物プランクトンの光合成活性や増殖が滞っている海域が複数報告されており、バイオマス燃焼や黄砂などの鉱物ダストに由来する自然起源鉄に加え、「人為起源鉄」の供給プロセスとその役割が注目されている。同研究グループは、これまで観測・報告例がなかった「南大洋」域の人為起源鉄に着目した。2009~2018年にかけて南北両半球の西経0°~東経135°を対象とする航空機観測キャンペーンを行い、全球気候シミュレーションを実行した結果、同海域の人為起源鉄の大気濃度が1桁程度、過小評価されていることを発見した。実観測およびモデル計算の結果を比較したところ、従来推定の約10倍(0.1 ng/m3)に相当するという実態が明らかになり、同海域において人為起源鉄が大気から海洋への鉄供給に大きく寄与している(自然起源鉄は支配的ではない)可能性を示した。さらに人為起源鉄の複数の将来放出量シナリオを作成し、将来の人為起源鉄の放出・生成量と可溶性鉄の沈着量を推定している。どちらも今世紀末に大幅減少するため、海洋の生物生産性とCO2吸収能力の低下(温暖化の加速)を招く可能性が示唆された。気候変動予測の不確実性低減に資する新知見であり、プロセスのさらなる理解を通じて地球温暖化予測の高度化が期待できるという。

情報源 名古屋大学 プレスリリース
機関 名古屋大学
分野 地球環境
大気環境
キーワード 不確実性 | 南大洋 | 人為起源鉄 | CO2吸収能力 | 航空機観測 | 可溶性鉄 | 自然起源鉄 | 全球気候シミュレーション | 生物生産性 | 大気エアロゾル
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