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 東大など、液体脂肪酸のヒドロキシラジカル生成メカニズムを解明

発表日:2022.09.08


  東京大学、筑波大学および国立環境研究所の研究者らは、液体脂肪酸が光分解する時に発生するヒドロキシラジカル(以下「OHラジカル」)を直接観察し、生成効率を定量測定することに成功した。地球大気の21%(体積ベース)を占める酸素の一部は「酸化力の強い酸素(活性酸素)」へと順次変化している。活性酸素のなかでも「OHラジカル」は極めて反応性が高く、大気中のあらゆる物質と反応する。気体と微小な液体粒子・固体が混合・凝縮した微粒子(エアロゾル)の濃度や変質に影響をおよぼすことから、「大気の掃除屋」とも呼ばれている。また、エアロゾルは雲(粒)の形成に関与しているため、放射強制力(気候に対して与える放射の大きさ)にも間接的な影響を与える。OHラジカルは主にオゾンの光分解によって生成されているが、オゾン以外からの生成プロセスも多数報告されている。本研究では、液体脂肪酸の一種であるノナン酸(以下「NA: Nonanoic acid」)の光反応・CH3(CH2)7COOH+hν→CH3(CH2)7CO+OHに着目している。NA(ペラルゴン酸とも言う)は特定の植物等から排出される難溶性・無色の飽和脂肪酸で、海洋表面やエアロゾルなどの液体界面に普遍的に存在している。対流圏を模した真空(減圧)下において、レーザー誘起蛍光法(Laser Induced Fluorescence: LIF)と和周波発生振動分光法(Vibrational Sum-Frequency Generation spectroscopy: VSFG)を組み合わせることで、当該反応の実態把握に接近した。LIFによる観察を通じて、液体状のNAに由来するOHラジカルが検出され、その生成効率は極めて低いことが明らかになった(気体状の脂肪酸の100分の1以下)。一方、VSFGによる計測によって、液体NAが特殊な環状二量体構造を呈しており、それがOHラジカルの形成を阻害し、光化学反応性の低下をもたらしていることが示唆された。本研究の着眼点と開発手法は、地球大気化学のみならず物理・化学の分野においても世界に類を見ない新しい試みであり、基礎科学として今後の発展が大いに期待されるという。

情報源 東京大学 プレスリリース
筑波大学 TSUKUBA JOURNAL
国立環境研究所 報道発表
機関 東京大学 東京大学大学院総合文化研究科・先進科学研究機構 筑波大学 国立環境研究所
分野 地球環境
大気環境
キーワード エアロゾル | OHラジカル | 活性酸素 | 対流圏 | 液体脂肪酸 | 光分解 | ヒドロキシラジカル | ノナン酸 | 環状二量体構造 | 地球大気化学
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