国立環境研究所、東京大学大気海洋研究所、韓国科学技術院および東京大学生産技術研究所の研究チームは、世界平均降水量の変化(以下「ΔP」)の不確実性を低減する手法を創出した。大気や海洋などの中で起こる現象を物理法則にしたがって定式化し、擬似的な地球を再現しようとする、さまざまな計算プログラム(以下「気候モデル」)が提案されている。気候変動対策を考える上で、気候モデルが出力する気候変数(気温、降水量など)のばらつき(不確実性)を低減させることが重要な課題になっている。世界平均気温の不確実性を低減させるための研究は数多く行われており、それらの成果はIPCC第6次報告書に反映されている。しかし、ΔPの「不確実性」低減に関する検証はほぼ手つかずで、気温に比べてエアロゾル(大気汚染物質)排出量の増減に敏感に反応する性質がΔP予測の制約となっていた。同研究チームは、世界平均エアロゾル排出量がほとんど変わらず気温や降水量のトレンドに影響しない期間(1980~2014年)に着目し、エアロゾル排出量増加の影響を取り除くことで、GHG濃度増加に対する気候応答の信頼性が評価できると考えた。中程度のGHG排出シナリオにおいて、67の気候モデルと観測のトレンドを比較した結果、降水量増加の「予測幅の上限」の6.2%を5.2~5.7%へ引き下げることが可能となり、予測の分散を8~30%低減できる可能性が示唆された。気候変動影響の評価や気候変動対策を担う政策決定者に対し、より正確な情報を提供できるようになるという。