(国研)農業・食品産業技術総合研究機構は、イネの穂温(推定値)に基づいて水田の不稔率を推定するモデルを開発した。温暖化の進行に伴う水稲の高温障害、とりわけ開花期の高温で受粉できず稔らなくなる「高温不稔」の増加が懸念されている。同機構は、20年以上前から温暖化を想定した水田の微気象に関する研究を進めており、人工気象室における実験や観測技術の高精度化に取り組み、高温不稔の指標となる「穂温」を気象情報から算出するモデル(以下「穂温推定モデル」)を開発している。高温不稔は熱帯地域や中国の長江流域のみならず、日本でも2007年の夏季異常高温時に発生している。しかし、全国的な実態調査は行われておらず、高温不稔の発生条件に関する知見は十分ではなかった。同機構は、2018年の猛暑下におけるコシヒカリの出穂・開花期(7月中旬~8月上旬)に焦点を当て、8府県(茨城県、千葉県、群馬県、埼玉県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府)で広域調査を実施した。その結果、出穂・開花期に高温に遭遇した水田で、通常より高い割合で不稔が発生する傾向が認められた。また、穂温推定モデルを用いて水田ごとの穂温を計算し、さらに不稔率(不稔となった籾数の割合)を推定するシミュレーションモデルを開発し、開花期の穂温と実際の不稔率の関係を調査したところ、不稔率は開花期の日中の穂温と高い相関関係があり、穂温が33°C付近を超えると不稔率が増大し始めることが明らかになった(従来の認識では気温35℃)。高温の時期と出穂のタイミングによっては、温暖化後を待たずして高温不稔は発生し得ると指摘している。
情報源 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 プレスリリース
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機関 | (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 |
分野 |
地球環境 環境総合 |
キーワード | 水田 | 温暖化 | 高温障害 | シミュレーションモデル | 穂温 | 不稔率 | 高温不稔 | 微気象 | 穂温推定モデル | 出穂・開花期 |
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