東北大学大学院工学研究科の平賀優介助教らは、スーパーコンピュータ「AOBA」を用いた数値気象モデルにより、線状降水帯がもたらす「想定最大規模降雨(PMP)」の将来変化を高精度推定した(掲載誌:Journal of Hydrology)。
近年、線状降水帯の発生による豪雨災害が常態化している。日本では1,000年に1度の確率で発生する大雨をPMPと定義し、防災計画やハザードマップの基礎としているが、気候変動がこの基準に与える影響は十分に解明されていなかった。
本研究では、山形県赤川および新潟県越後荒川流域を対象に、気候変動下でのPMPを推定。2050年代および2090年代の気候条件下では、特に赤川流域で24時間降水量が現在の346.6mmから457.1mmへと大幅に増加することが示された。さらに、気温または露点温度が1度上昇すると、降水量が20%以上増加する傾向が確認され、これは水蒸気量の増加を示すクラウジウス・クラペイロン関係(約6〜7%)を大きく上回る結果であった。この増加は、熱力学的要因に加え、風の収束や対流の持続といった「力学的要因」が強く影響していると考えられた。また、気候シミュレーションを用いた頻度分析により、現在の「最大クラス」の大雨が、将来の気候では10倍以上の頻度で発生する可能性も示された。
本成果は、気候変動下におけるPMPの変化を降水量と発生確率の両面から定量的に評価した世界初の試みであり、今後の治水計画、防災インフラの見直し、国際的な防災政策への応用が期待される。
情報源 |
東北大学 プレスリリース・研究成果
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機関 | 東北大学 |
分野 |
大気環境 環境総合 |
キーワード | 気候変動 | スーパーコンピュータ | ハザードマップ | 降雨頻度 | 線状降水帯 | 想定最大規模降雨 | 数値気象モデル | 熱力学的要因 | 力学的要因 | 防災インフラ |
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