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 岡山大など、未利用熱を輸送するバイオベース高分子カプセルを創出

発表日:2022.02.17


  岡山大学と中国精油(株)は、蓄熱剤を内包したマイクロカプセル(直径:50〜100 μm)を高速生産する技術を開発した。創薬分野では、薬剤を疾患部位に輸送する効果的な薬剤送達システム(DDS: Drug Delivery System)の開発が盛んに行われている。薬剤のナノ粒子化や、生体適合性と薬物担持量を併せ持つポリマーシェルのマイクロカプセル(MC)化といった要素技術には、高分子化学のコア技術や知見がふんだんに活用されており、商品化に至っているものが少なくない。一方、こうした技術を薬剤以外の物質輸送に応用する研究も進められている。物質が相変化する際に吸収・放出する熱エネルギーを蓄え、それを必要な時と場所で利用する材料(潜熱蓄熱剤)のMC化も有望技術のひとつと考えられている。従来はシックハウス症候群の原因物質とされるホルマリンを用いた合成高分子をカプセル殻素材(以下「殻材」)に使用するものが多かったが、両者は、潜熱蓄熱剤の漏出防止といった安全性への配慮、時代の要請に応じた石化由来素材の使用削減に加え、「人体に優しい殻材を採用(ホルマリンフリー化)」するといったコンセプトで新規「バイオベース高分子を殻材とする蓄熱MC」を設計した。マイクロ流路と呼ばれる細い流路に殻材の原料液(酢酸セルロース)を界面活性剤水溶液とともにノズル先から送液する装置を用いて、作製条件を最適化した結果、「溶媒拡散法」の仕組みによって酢酸メチルと蓄熱剤(パラフィン)が相分離し、サイズの揃ったMC(蓄熱剤含有量:66 wt%)が迅速かつ連続的に製造できることが確認された。さらに示差走査熱量計を用いた評価を行ったところ、当該MCの蓄熱量は176 J/gで、過冷却が無視できる潜熱蓄熱容量を有することが分かった。セルロースの誘導体である酢酸セルロースを主原料としており、バイオマス由来パラフィンの製造技術が確立されているため、潜熱蓄熱剤、殻材のいずれにも石化由来素材を用いない150℃以下の未利用熱を蓄熱・輸送・利用する基盤技術として、社会実装が十分期待できると述べている。

情報源 岡山大学 プレスリリース
機関 岡山大学 中国精油(株)
分野 環境総合
キーワード 酢酸セルロース | マイクロカプセル | ホルマリンフリー | 高分子化学 | 潜熱蓄熱剤 | バイオベース高分子 | 殻材 | マイクロ流路 | 溶媒拡散法 | バイオマス由来パラフィン
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