国内ニュース


 極地研とリール大学、「海の憲法」に基づく海洋生物保護の具体策を提示

発表日:2022.03.22


  国立極地研究所(極地研)とフランスのリール大学は、「海洋法に関する国際連合条約(1994年発効)」の理念が海洋生物の保護政策に準用できることを科学的に証明した。同条約は海洋分野における国家の権利義務関係を包括的に定めたもので、17部320カ条の本文と9つの附属書からなり、「海の憲法」とも呼ばれている(2019年4月現在の批准国・地域:168)。第12部「海洋環境の保護及び保全」には、生物多様性保全に関する一般的な義務等が明記されているが、具体的な措置については定められておらず、各国に委ねられていると理解されていた。今もなお、「公海」すなわち国家管轄権を越える区域(ABNJ:Areas Beyond National Jurisdiction)のガバナンスと持続可能な利用に関する交渉は続いている。他方、人間活動(例:海洋汚染の多発、漁業の拡大、気候変動)は、海洋生物の脅威となっていることが指摘されている。極地研の研究者らは、広範囲に海域を移動する海洋生物の代表格であり、最も脅威にさらされていると見られている「ペンギン」に焦点を当て、ABNJにおける活動の可視化に取り組んだ。陸域や領海、EZZと異なり、直接の調査・観測が困難であることから、131の科学論文を解析し、18種のペンギンの活動を総合的に考察した。その結果、13種のペンギンがABNJに移動していることが分かり、季節やライフサイクルの段階に応じて特異的な長距離移動を行う可能性があることが明らかになった。越冬時の巣からの移動、換羽前後の移動、巣立ちの際に、しばしば10,000 kmを超える移動を行った事例も報告されていたという。今回の事例研究は、ABNJにおける人間活動の厳格な規制の必要性を示唆するものであり、各種がABNJに移動する時期を衛星などのリモートセンシング技術を用いて把握し、「移動式海洋保護区」を設定するといった新たな施策(案)の導入を図り、同条約における優先すべき領域の特定につなげたいと述べている。

情報源 国立極地研究所 研究成果
機関 国立極地研究所 リール大学
分野 自然環境
キーワード フランス | 公海 | 生物多様性保全 | ペンギン | 海洋法に関する国際連合条約 | 海の憲法 | 海洋環境の保護及び保全 | 国家管轄権を越える区域 | Areas Beyond National Jurisdiction | 移動式海洋保護区
関連ニュース

関連する環境技術