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 農工大など、ゲレンデ跡地の「チョウ類相」衰退メカニズムを解明

発表日:2022.05.12


  東京農工大学、東京大学およびクィーンズランド大学からなる国際共同研究チームは、ゲレンデ跡地でチョウ類相が衰退するプロセスとその要因を明らかにした。人為的な管理が行われている草地(半自然草地)は世界的に減少しており、そこに生息する多様な動植物への影響が懸念されている。同研究グループは、定期的な管理が行われているものの、生物多様性保全の場と見られていなかった半自然草地に焦点を当てた調査に取り組み、送電線の下がチョウの楽園(重要なハビタット)になっていること等を発表してきた(Oki, K. et al., 2021)。本研究は、気候変動に伴う雪不足や人口減少(利用者の減少)に伴い、半自然草地の一角をなすスキー場の閉鎖が相次いでおり、草刈りなどの管理が停止したゲレンデが増加している情勢や、「チョウの指標性」を踏まえて設計されている。1~46年前に営業停止した、長野県北部周辺のスキー場跡地19か所および営業中のスキー場5か所における現地調査では、各地の植物群落・群集の詳細が確認され、草地性・荒地性・森林性の多様なチョウ(計61種、2,533個体)が観察された。一般化加法モデルを用いて、スキー場の営業停止からの経過年数とそれらの関係を解析した結果、草地性・荒地性のチョウは、閉鎖からの経過年数に伴って種数や量が減少することが明らかになった。森林性のチョウは閉鎖後に一時的に種数や数が増加するものの、長期的には減少する。こうした負の関係は、ゲレンデの放棄により植物高が高くなることを契機とする、食餌植物の減少・成虫の生息環境劣化の影響によるものと考えられた。森林性種の減少には個別の条件(スキー場の造成・管理方法など)が影響している可能性が高く、約10年間放棄されたゲレンデの減少が顕著であった。スキー場閉鎖後、少なくとも10年間隔で適切な管理を継続することで、ゲレンデ跡地における生物多様性保全効果の発現が期待できる、と提唱している。

情報源 東京農工大学 プレスリリース
東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部 研究成果
機関 東京農工大学 東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部 The University of Queensland
分野 自然環境
キーワード 気候変動 | チョウ | 生物多様性保全 | 半自然草地 | 一般化加法モデル | スキー場 | チョウ類相 | ゲレンデ | 食餌植物 | 森林性種
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