氷河の侵食によって形成された深いU字型の峡湾(フィヨルド)。―――グリーンランドのフィヨルドは大規模で深く、その多くは氷河の末端から始まり、海に向かって広がっている。氷河融解水や海流の混合によって栄養豊富な水と多様な生態系が創り出されている。しかし近年、主要な漁場でもあるグリーンランドのフィヨルドでは、温暖化による氷河の後退・消失が進み、海水・海流の循環や生態系が様変わりしつつある。今回、海洋研究開発機構、東京大学、国立極地研究所および北海道大学の研究者は、グリーンランドのフィヨルドを対象とした「『海洋低次栄養段階』生態系モデル」を開発し、氷河融解水の流入の盛んな夏季における海洋の栄養塩の動態を定量的に解明することに成功した。本研究により、氷河融解水の流入によってフィヨルド内の海水が大きくかき混ぜられる「鉛直循環」や、フィヨルドの「成層を弱める効果」により栄養塩が表層に供給されて基礎生産が促されていることが明らかになった。さらに温暖化に伴う影響を評価した結果、融解水の流出量が増加した条件では基礎生産量が増加するが、氷河が後退して大量の土砂流出が起きる条件では著しく減少することがわかった。今後は開発モデルを精緻化し、さまざまなフィヨルドにおける生物生産の変化予測を試みるという。【キーワード解説】海洋低次栄養段階:食物連鎖上におけるエネルギーと有機物が生物をとおして転送される段階過程。本研究では動植物プランクトンを指す。
情報源 |
海洋研究開発機構 プレスリリース
東京大学大気海洋研究所 プレスリリース 国立極地研究所 プレスリリース 北海道大学 研究発表 |
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機関 | 海洋研究開発機構 東京大学大気海洋研究所 国立極地研究所 北海道大学 |
分野 |
地球環境 自然環境 |
キーワード | グリーンランド | 栄養塩 | フィヨルド | 土砂流出 | 基礎生産 | 氷河融解水 | 海洋低次栄養段階 | 鉛直循環 | 成層 | 動植物プランクトン |
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