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 JAMSTECなど、画像分類AIで潜在植生のグローバル分布を高精度予測

発表日:2022.04.18


  海洋研究開発機構(JAMSTEC)と京都大学フィールド科学教育研究センターは、画像分類AIを用いて「潜在植生」を推定する新手法を開発した。潜在(自然)植生とは、人間の干渉を受けずに、所与の環境条件(気候、地質、地形、緯度など)下で安定し得る植生のこと。森林の管理活動、環境アセスメント、自然科学の分野では、植生調査に基づいて作成された潜在自然植生図(国・都道府県スケール)が活用されている。潜在植生の世界的な分布については、1940年代に提案されたホールドリッジライフゾーン(HLZ)のスキームが広く用いられている。HLZは年平均気温と年降水量のみを用いて陸生生物系を分類する手法で、簡便で汎用性は高いが、高い精度は期待できないものであった。気候の季節変化を考慮する手法も複数開発されている。しかし、精度向上は図られたものの、それぞれが問題(使用データの減損、恣意性の排除、植物生理学的なアプローチによる制約など)を抱えており、全球スケールでの適用には未だ限界があった。両者は、潜在植生を画像分類AIにより判別する新たな手法の開発に取り組んだ。新手法は、AI研究の黎明期に開発された「畳み込みニューラルネットワーク(CNN: Convolutional Neural Network)」を応用したものである。前処理として、全球の陸面を0.5度の格子状に分割し、各格子について「色」で表現された気温と降水量の組み合わせを時系列に並べた画像を作成し、これら画像を潜在植生ごとにグループ化する作業を行う。このグループ分けした画像群をCNNに学習させることで、簡便性を極力保ちながら、これまで開発されてきた手法を上回る精度で潜在植生を再現することに成功した。高度な技術や大きな計算資源を必要としない手法であり、気候変動に伴うリスク分析やモデリングなどへの応用が期待できるという。

情報源 (国研)海洋研究開発機構 プレスリリース
機関 (国研)海洋研究開発機構 京都大学フィールド科学教育研究センター
分野 自然環境
環境総合
キーワード 気候変動 | モデリング | 画像分類AI | 潜在植生 | ホールドリッジライフゾーン | 全球スケール | 畳み込みニューラルネットワーク | Convolutional Neural Network | 簡便性 | リスク分析
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