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 帯畜大など、防災と淡水動物保全のwin-win戦略を提唱

発表日:2022.04.19


  帯広畜産大学、東京農工大学・北海道大学等からなる研究グループは、生活圏・居住地域をベースとする「防災と淡水動物保全の両立」に向けた施策(以下「同時達成施策」)を提示した。生物多様性保全を巡っては、保護区の設定に加え、「その他の効果的な地域」における副次的・二次的な手段や、保護の主目的化を狙いとする施策の導入が求められている。他方、生態系を活用した防災・減災(Ecosystem-based disaster risk reduction;Eco-DRR)や、自然の力を利活用して住み良い生活空間を創造するグリーンインフラの考え方が浸透しつつある。同研究グループは、気候変動に伴う記録的な大雨の頻発化と、大規模な洪水に対する適応策の必要性を念頭に置き、これまで検討されてこなかった同時達成施策の解明に取り組んだ。本研究では、国土交通省の河川水辺の国勢調査、環境省の自然環境保全基礎調査で得られた全国の生物分布データベース(2001年~2010年)を用いて、魚類131種と底生動物1395 種の分布情報(1km×1kmに区切り再集計)を全国スケールで評価している。国立公園の分布との重複を調査した結果、国立公園と淡水動物の分布は重なっておらず、国立公園内に当該種の保護区を設置しても効果は限定的であることが分かった。しかし、効率よく、全ての種の存続を担保する地域を絞り込み探索したところ、「洪水リスクが高い場所」と「淡水動物を保全するために必要な場所」の多くが重なっていることが明らかになった。洪水リスクは、発生規模と人口などを加味した想定被害によって評価されている。すなわち、人の生活を保障するための洪水リスク軽減策に生物多様性保全策を組み込むことで、多くの淡水動物が保全できると結論している。同時達成施策の成功例(千歳川の遊水地におけるルリボシヤンマ・イバラトミヨの保全など)が既にあり、全国、アジア各国における適応策オプションとしての展開が期待できるという。

情報源 帯広畜産大学 ニュース
機関 帯広畜産大学 東京農工大学 北海道大学
分野 自然環境
キーワード 生物多様性 | 適応策 | 防災 | 保護区 | グリーンインフラ | Eco-DRR | 自然環境保全基礎調査 | 洪水リスク | 淡水動物 | 千歳川
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