国内ニュース


 琉球大と沖縄県、環境にやさしい害虫防除法で世界をリード

発表日:2022.05.19


  琉球大学と沖縄県病害虫防除技術センターの研究チームは、「不妊虫放飼法(sterile insect technique: SIT)」による世界初の害虫根絶事例を報告した。SITは、対象害虫を人工的に大量増殖し、放射線等によって不妊化して野外へ放す害虫管理の一手法。農薬の毒性を考慮する必要がなく、環境負荷が少ない手法として注目されている。海外ではSITによるハエ類の根絶に成功しており、沖縄県でも1993年にウリミバエの根絶に成功している。今回発表された論文(Himuro, C. et al., 2022)は、沖縄県では2例目、世界で初めて甲虫類にSITを適用し、成功をおさめた実績の集大成となるもの。久米島における「アリモドキゾウムシ」根絶プロセスの全容が紹介されている。アリモドキゾウムシ(分類群:コウチュウ目 ゾウムシ上科 ミツギリゾウムシ科)は体長約6 mmの甲虫で、熱帯、亜熱帯地域に広く分布するサツマイモの世界的な害虫。本邦の南西諸島一帯でも大きな農業被害をもたらし、沖縄県産サツマイモが出荷停止など、長期的な経済損失を招いていた。両者が久米島で事前調査(標識再捕獲法)を実施したところ、同島に生息するアリモドキゾウムシの雄が約50万頭に達することが明らかになった。そのため、SITの実施に先立ち、雄誘引トラップを使用した「雄除去法(male annihilation technique: MAT)」によって野生個体群の密度を徹底的に低下させた(1994年11月~1999年1月)。その後、毎週数十から数百万頭の不妊虫(合計:4億6千万頭)を島内全域に放飼する大規模なSITが行われ、19年間にわたってヒルガオ科の顕花植物であるノアサガオや、サツマイモの茎・塊根の分解調査によるモニタリングが行われた(事業名:特殊病害虫特別防除事業)。ノアサガオでは2011年10月に発見されたのを最後に寄生率がゼロとなり、サツマイモでは1996年11月に発見されて以来、寄生率ゼロで推移し、久米島のアリモドキゾウムシは根絶に至っている(確認年月日:2012年12月28日)。本論文の成果は、世界各地における甲虫類根絶事業の重要な礎となり、久米島におけるサツマイモ栽培振興のきっかけになった、とアピールしている。

情報源 琉球大学 研究成果
機関 琉球大学 沖縄県病害虫防除技術センター
分野 自然環境
環境総合
キーワード サツマイモ | 甲虫 | 久米島 | 不妊虫放飼法 | sterile insect technique | 害虫根絶 | ウリミバエ | アリモドキゾウムシ | コウチュウ | 特殊病害虫特別防除事業
関連ニュース

関連する環境技術