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 妊婦のメンタルヘルスに犬はプラス!猫はマイナス? 富山大

発表日:2022.08.05


  富山大学は、「子どもの健康と環境に関する全国調査(愛称:エコチル調査)」のデータを用いて、妊娠中における犬の飼育は母親のメンタルヘルスに対する保護因子であるが、猫の飼育はリスク因子であることを明らかにした。単身世帯の増加、近年ではコロナ禍の影響も手伝い、犬や猫の総飼育頭数は高い水準(1,600万頭前後)で推移している。コンパニオンアニマル(伴侶動物)という概念が定着し、愛玩動物(ペット)とより濃密なコミュニケーションを図り、癒しを求める飼い主も少なくない。しかしながら、ペットとメンタルヘルスの関係は未解明な点が多く、飼い主に悪影響をもたらすという調査結果も報告されている。同大学は、高齢者、一人暮らしなどと並び、メンタルヘルスが不安定になりやすい「妊娠中から産後にかけての女性」の集団に着目した。当該集団は、ホルモンバランスの乱れなどからくる体調の変化や、育児による生活リズムの変化などにより、「うつ」などを発症する可能性が高い。エコチル調査のデータには、妊婦の基本的な属性(年齢、出産日等)や、社会経済要因・精神疾患既往歴などの他にも、妊娠中のペット飼育(犬・猫の飼育なし、犬のみ飼育、猫のみ飼育、犬・猫の双方飼育)と妊娠中・産後(1ヶ月、6ヶ月、1年)の抑うつ症状および心理的苦痛に関する情報が紐づいている。今回、80,814人の妊婦データを用いた疫学的な分析を行ったところ、これまで理解されていなかったペット飼育と妊娠中・産後のメンタルヘルスの関係性が明確になった。犬も猫も飼育してない集団と比べ、1)犬を飼育している集団は、産後の抑うつ症状等が低く、2)猫を飼育している集団は、抑うつ症状等が高く、3)犬・猫双方を飼育している集団は、妊娠中における心理的苦痛が高い、という結果が得られている。各集団の差異は、家畜化された歴史の長さや祖先種(オオカミ、ヤマネコ)との遺伝的距離の違いによって生じたと考察している。また、公衆衛生学的な観点から、猫に寄生するトキソプラズマ原虫の感染症をはじめ、妊婦とペットの接触は一定程度の危険性をはらんでいることに留意する必要がある、と指摘している。

情報源 富山大学 プレスリリース
機関 富山大学
分野 健康・化学物質
自然環境
キーワード 感染症 | エコチル調査 | 犬 | 猫 | メンタルヘルス | 精神健康 | ペット飼育 | 抑うつ症状 | 心理的苦痛 | 縦断研究
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