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 中国の運輸部門CO2~2060年までに最大81%削減も可能! 広島大と国環研

発表日:2022.08.23


  広島大学と国立環境研究所の研究者は、中国の運輸部門における脱炭素化の道筋を検証した。中国のCO2排出量は世界の総炭素排出量の約 30%を占めている(2018年調べ)。同国のCO2排出削減努力は世界全体のCO2削減に大きな影響と意味を持っている。こうした現状があるなか、中国政府は低炭素経済への移行に意欲を見せており、2020年9月の第 75 回国連総会においてカーボンニュートラルの達成を宣言している(目標年次:2030年、2060年)。広島大学の研究者らは、中国の経済発展と未曾有の都市化に伴って運輸部門(旅客・貨物輸送)のCO2排出量が急増し、同国のカーボンニュートラル宣言の足かせとなると考え、統合評価モデル(IAM: Integrated Assessment Model)をベースとする新たなフレームワークを開発した。IAMは、環境政策による長期的かつ部門横断的な影響評価にしばしば適用されているが、時間・空間・技術等の分析精度が低く、運輸部門特有の要因(例:輸送モード、車両技術等)を考慮することが難しい。本研究では、低炭素輸送の戦略策定などに広く適用されている「回避・転換・改善(ASI: Avoid, Shift, Improve)アプローチ」を導入し、それらの課題を払しょくしている。新たなIAMフレームワークは、中国 31 省を対象とし、交通モデルのみならずエネルギーシステムモデルを組み合わせたものとなっている。ASIの3要素、さまざまな政策手段(規制、情報、価格、技術)、さらには両者の組み合わせによるCO2排出削減率を比較検証した結果、"バランスの取れた低炭素交通政策パッケージ(例:輸送需要の削減×モーダルシフト×技術の改善等)"を導入することで、2060年までに中国の運輸部門におけるCO2排出量を最大で81%削減できることが明らかになった(ベースラインシナリオ比)。中国のカーボンニュートラル実現に向けて、"相乗効果を最大化し、トレードオフを最小限に抑える"低炭素政策の方向を提示することが肝要、と結んでいる(掲載誌:Nature Communications、DOI:10.1038/s41467-022-31354-9)。

情報源 広島大学 ニュース&トピックス
国立環境研究所 報道発表
機関 広島大学 国立環境研究所
分野 地球環境
環境総合
キーワード 中国 | 運輸部門 | カーボンニュートラル | 脱炭素化 | 低炭素経済 | 統合評価モデル | IAM | 回避・転換・改善 | ASI | 低炭素交通政策パッケージ
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