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 深海底を3D透視!?新・底生生物調査ツール「A-core-2000」 東大など

発表日:2022.07.28


  東京大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)および産業技術総合研究所(AIST)の研究グループは、深海底堆積物中の生物分布を立体的にとらえ、3D描写することができる画期的な調査システムを編み出した。海底の表面やその下層には多様な甲殻類・貝類等(以下「ベントス」)が生息している。海洋開発においてより厳格な環境アセスが求められ、海洋の気候変動影響が注視される今日、ベントスの動態把握がますます重要となってきた。しかしながら、ベントスの多くは海底堆積物中で生活するinfauna(インファウナ)であり、潜水船や深海カメラによる実態把握が容易ではない。とりわけ深海底を対象とする調査は難易度が高く、多大な時間やコストを要する。また、底質試料を直接サンプリングしても“時空間的な分布”を明らかにすることは困難であった。こうした従来調査技術をめぐる課題を踏まえ、同研究グループは、新コンセプト(非接触・非破壊で3次元的かつ効率的に調査等)を掲げ、2000 mまでの深海底に対応可能なAcoustic coring system(A-core-2000)を開発した。「A-core-2000」は、高周波の集束型超音波センサと専用の防水モーターを搭載した2軸フレームで構成されている。250 mm×250 mm(x-y)の範囲を500 kHzの周波数の音を海底に連続的に照射しながら、2 mm間隔でスキャンニングする仕組みとなっている。静岡県初島沖の相模湾深海(水深851-1237 m)で実証試験が行われた。予め底質の粒度試験などを行い、ターゲットとなるシロウリガイのコロニーが特定された(分担:AIST)。測定には、JAMSTECの有人潜水調査船「しんかい6500」が活用された。A-core-2000等機材で当該コロニー周辺を機動的に測定した結果、堆積物中に埋没しているシロウリガイの殻が特定され、個体の空間的な分布状況を示す3次元の音響画像(z軸方向: 150 mm)の作成に世界初成功した。これまで調査自体が困難であったインファウナの分布や生態の解明に役立つことはもとより、関連研究の飛躍的な進展に貢献する技術である、と訴求している。

情報源 東京大学大学院新領域創成科学研究科 お知らせ(記者発表)
海洋研究開発機構 プレスリリース
産業技術総合研究所 ニュース・研究成果一覧
機関 東京大学大学院新領域創成科学研究科 海洋研究開発機構 産業技術総合研究所
分野 自然環境
キーワード 深海底 | 堆積物 | 気候変動影響 | 相模湾 | インファウナ | 非接触・非破壊 | Acoustic coring system | 超音波センサ | シロウリガイ | しんかい6500
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