京都大学や三重大学、東京大学などの研究者からなる国際共同研究チームは、森林から河川に流入する陸生無脊椎動物が、サケ科魚類アマゴの生活史の多様性に影響を与えることを、大規模な野外実験を通じて明らかにした。研究成果は、米国の学術誌「Ecology」に2025年5月18日付で掲載された。
研究では、和歌山県の自然河川において、昆虫の流入を模したミールワームを異なる時期に供給する3つの実験区を設け、アマゴの成長と成熟のパターンを2年間にわたり追跡。その結果、初夏に餌資源を供給した区間では、高成長かつ早熟な個体が多く見られ、1歳で成熟する個体と2歳以降に成熟する個体がほぼ均等に存在するなど、生活史の多様性が最も高くなることが確認された。一方、秋に供給した区間や供給のない区間では、中間的な成長を示す個体が多く、成熟は2歳以降に偏る傾向が見られた。これは、森林からの資源流入のタイミングが、魚の成長と生存戦略に大きな影響を与えることを示している。
研究チームは、気候変動や森林伐採などによってこのような自然のつながりが断たれると、魚類の生活史の多様性が失われ、個体群の安定性が損なわれる可能性があると警鐘を鳴らす。今後は、こうした多様性の維持が生態系全体に与える影響や、持続可能な森林・河川管理のあり方についての研究が期待される。