東京理科大学と愛媛大学の研究グループは、河川中のマイクロプラスチック濃度変化に法則性を見い出し、それをベースに“適切な現場サンプリング回数”を導出した。マイクロプラスチック(5 mm以下の微細なプラスチック類)が水圏生態系におよぼす影響が懸念されている。世界の海洋でマイクロプラスチック(以下「MP」)が観測されており、陸域の主要な流出ルートである「河川」の実態把握が急務となっている。本邦では「河川マイクロプラスチック調査ガイドライン(環境省水・大気環境局)」が整備され、調査地点の設定やプランクトンネットを用いた試料採取方法をはじめ、各種測定・分析の詳細が定められている。試料の採取位置に関しては、河川横断面内では流心(最も流れの速い場所)を選び、川幅が広い場合は3地点以上設定することが望ましい、とされている。本研究は、“科学的な根拠に則った(精度を確保し得る)適切な回数とは?”という素朴な疑問を端緒としている。現場サンプリング回数の標準化がなされていないことで、異なる調査研究間での比較が難しくなる。また、地方公共団体等は各般の制約(時間的・人的・金銭的コスト等)があるなかで河川MP調査に取り組んでいる。こうした課題を踏まえ、同研究グループは先ず、千葉県北西部の野田市周辺を流れる2本の実河川(大堀川、利根運河)において河川MP濃度の一般化に向けた調査を行った。その結果、“MP濃度の標本間分散が濃度推定値の平均値に比例する”という仮説が裏付けられ、どちらの河川にも当てはまるシンプルな線形モデルの存在が浮かび上がり、MP粒子が確率変数(起こり得る確率の範囲が決まっている変数)をもって説明できるランダムな空間分布(ポアソン過程)をとることが示唆された。本研究では、これらの知見に基づき、サンプリング精度を予測する手法を開発している。同手法を高濃度(MP3粒子/1 m3以上)条件下に適用したところ、2回のサンプリング結果を算術平均するだけで誤差30%以下の十分な推定精度が保たれることが明らかになった。河川MP調査の効率化・低コスト化への寄与が期待される。
情報源 |
東京理科大学 プレスリリース
愛媛大学 プレスリリース |
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機関 | 東京理科大学 愛媛大学 |
分野 |
ごみ・リサイクル 水・土壌環境 |
キーワード | マイクロプラスチック | 低コスト化 | 現場サンプリング | 河川マイクロプラスチック調査 | 試料採取 | 野田市 | 線形モデル | 確率変数 | ポアソン過程 | ランダムな空間分布 |
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