東京農工大学と日本野鳥の会は、伊豆諸島で繁殖する海鳥「オーストンウミツバメ」にプラスチック由来の化学物質が高濃度蓄積していることを明らかにした。両者は神津島の属島・祇苗島で採取した尾腺ワックスを分析し、残留性有機汚染物質である「ポリ塩化ビフェニル(PCBs)」と「ジクロロジフェニルジクロロエチレン(DDE)」、さらに「紫外線吸収剤(BUVSs)」を検出した。──尾腺ワックスは鳥類が羽毛の撥水性を保つために分泌する脂で、親油性化学物質が蓄積しやすい。今回の調査では、13羽すべてからPCBsとDDEが検出され、特に成鳥の一部では北太平洋の他の海鳥と比較しても高濃度(>1000ng/g-lipid)であった。また、BUVSsの一種であるUV-328は、2023年にストックホルム条約に登録されたばかりの物質であり、国内のウミツバメ類での検出は初めての知見となる。
オーストンウミツバメは準絶滅危惧種であり、生活の大半を遠洋で過ごすため、生態情報が乏しい。今回の研究では、繁殖期後半にPCBsとDDEの濃度が高まる傾向も確認され、プラスチック由来の化学物質が食物連鎖を通じて蓄積している可能性が示唆された。
研究チームは今後、ジオロケータによる海域利用の特定や繁殖状況のモニタリングを進めるとともに、プラスチック添加剤の生物蓄積の不均一性に関するデータの蓄積を目指す。──海鳥を含む海洋生物の保全と人間の健康を守るため、プラスチック削減や高懸念化学物質の規制強化が求められる。