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 写真撮影に技あり!3DCG生物標本で世界をリード 九大など

発表日:2022.08.26


  九州大学の鹿野准教授(所属:同大学・持続可能な社会のための決断科学センター等)は、世界に先駆けて、「生物標本の3Dモデル」を精彩かつ効率的に作成する技術を確立した。仮想現実(VR: Virtual Reality)技術を活用したソフトウェアが続々と開発されている。その勢いはとどまることを知らず、仮想空間の中で多様なデジタルコンテンツに触れ、双方向コミュニケーションができる“メタバース博物館”なども登場している。他方、実際の博物館が所蔵する自然史系資料は厳重に管理されているが、それらの経年的な劣化や退色は避けられない。とりわけ「生物標本」は傷みや汚れを防ぐために博物館の奥深くに所蔵されていることが多く、一般の利用(展示)に至らないケースも少なくない。本成果は、データ駆動型モデルの生態学への応用(エコインフォマティクス)に関する研究の一環として、VR等の将来展開を視野に入れ、生物標本をめぐる諸課題の同時解決を図るために開発されたもの。中核を成すのは、複数の写真からリアルな3DCGを生成する「フォトグラメトリ」を呼ばれる技術。既に、ドローン測量向けのソフトウェアパッケージが市販されており、写真の読み込みからデータ解析・加工までの流れは自動処理ができるようになっている。本研究では、これまで例のない生物分野への応用に向けて、生物の外形(形状、構造、色、模様)を正確、精緻に再現するための写真撮影技法を確立している。既存の生物標本(実物)をナイロン製の釣り糸で吊り下げ、回転させながら撮影する際、3つの技術的なポイントがあるという。具体的には、1)絞り値を最小値に設定し、フラッシュを強めにすること、2)無地の背景が望ましく、黒色の反射防止プレート等を使用したり、奥行きを深くとることで背景をプレーンにすること、3)ベストな写真を500枚以上用意すること、を挙げている(使用ソフトウェア:3DF Zephyr Lite)。ミノカサゴなどの魚類をはじめ、水生生物1400点700種以上におよぶ3Dモデルを作成し、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)の下、3D・VR・ARコンテンツの共有プラットフォームであるSketchfabに公開している。一連の成果を“バイオフォトグラメトリ”と称し、来るべきデジタル図鑑の時代に応えつつ、これからの生物多様性・環境教育に資する展開を期待している。

情報源 九州大学 NEWS
(一社)九州オープンユニバーシティ ニュース・トピック一覧
機関 九州大学 九州大学持続可能な社会のための決断科学センター (一社)九州オープンユニバーシティ
分野 自然環境
環境総合
キーワード 生物多様性 | 環境教育 | 生物標本 | VR | 仮想現実 | 仮想空間 | メタバース | エコインフォマティクス | フォトグラメトリ | クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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