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 今世紀に入り顕著化!日本近海の極端な海洋昇温 国環研

発表日:2022.10.07


  国立環境研究所は、日本近海における「極端な海洋昇温(EOW: Extreme Ocean Warming)」の発生確率を定量的に評価した。地球温暖化による海面水温(以下「SST」)の上昇が懸念されている。世界中の海で海洋熱波(数日から数年にわたる水温の急激な上昇)が観測され、日本列島の周辺でも観測史上例を見ない高SSTが報告されている。同研究所は、2020年8月に生じたEOWイベント(発生海域:日本南方沖を含む北西太平洋)の要因分析を行い、「過去の人間活動」に伴うGHGの増加等の影響を指摘している(Hayashi, M. et al., 2021)。しかし、18世紀半ばの工業化(産業革命)以降の地球温暖化が、日本近海で起きた数々のEOWイベントに与えた影響を包括的に調べた事例はなく、より定量的な評価や将来予測に踏み込んだ研究は行われていなかった。今回、先行研究の解析手法を応用し、過去40年間(1982~2022年)に日本近海で起きたEOWイベントの「発生確率」を見積もる作業が行われた。本研究では、EOWイベントを“工業化前に20年に1回未満の高SST”と定義している。最新の数値気候モデルによって得られた実験出力結果と実観測データを用いて、暦月ごと・地域ごとの推定を行った結果、1982年以降、EOWイベントの発生数が徐々に増加する傾向が認められた。こうした傾向は1998~2010年代半ばにかけて顕著となり、将来にわたる頻発化が示唆された。さらなる理解に向けて、新たな指標(算式:1-工業化前の確率/現状の確率)を用いた過去再現実験と将来予測シナリオ実験が行われた。その結果、工業化に由来する地球温暖化は2000年を境に影響を強め、日本の南方では発生確率が10倍以上となる事例も見受けられた。2000年以降の発生確率は「少なくとも2倍以上」と見積もられ、「1.5℃目標」の達成が高SST更新の常態化(2年に一度以上のペースで発生)防止の鍵を握ることが示唆された。

情報源 国立環境研究所 報道発表
機関 国立環境研究所
分野 地球環境
キーワード 気候モデル | 産業革命 | 海面水温 | GHG | 1.5℃目標 | SST | 海洋熱波 | Extreme Ocean Warming | 発生確率 | 工業化
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