愛媛大学を中心とする国際研究チームは、ベトナムの使用済み自動車(ELV)・廃電子機器(E-waste)解体作業場における複合汚染の実態を解明した。ASEAN加盟国は概ねプラス成長を遂げており、自動車(新車)の販売台数や電気・電子製品の普及率も堅調な伸びを見せている。それに併せて、中古製品や中古部品のリユース市場も発達し、解体や部品販売、さらに精錬やインゴット流通も手掛ける業者が急増した。ベトナム北部にはこうした業者が集積する村があり、不法投棄場所か、保管・解体前の処理に供する施設か判然としない解体ヤードが散見される。愛媛大学と国立環境研究所の研究者らは、2018~2020年度にかけて「ベトナムの廃棄物および工業・生活排水に由来する有害化学物質の動態とリスク評価」に取り組んできた。その一環として、当該地域のELV処理場とE-waste処理場で現地調査を行い、ダスト試料に含まれている有害化学物質の分析法を確立した。先行調査では、難燃性ポリマーに添加されている「臭素系難燃剤(BFRs)」が高い濃度で検出された。BFRsの製造・使用は国際的に規制されており、その代替物質であるリン酸エステル系難燃剤(OPEs)の使用量が増大している。また、EUのErP指令では、電子ディスプレイに対する「ハロゲン化難燃剤(HFR)」の使用を厳しく規制している。ELV処理場・E-waste処理場においてはBFRsのみならず、様々な有害化学物質の環境放出が懸念される。そこで本研究では、ガスクロマトグラフ三連四重極質量分析計(GC-MS/MS)を駆使して、ダスト試料に残留する有害化学物質の“包括的なスクリーニング調査”を行い、多様な難燃剤の汚染実態解明に迫った。その結果、総汚染レベルの違い(E-waste解体処理場>ELV解体処理場)や、ELV解体処理場では「塩化リン酸エステル系難燃剤(塩素系OPEs)」の汚染寄与率が高いことが明らかになった。塩素系OPEsは自動車のファブリックシート素材由来と考えられた。現在、東南アジアではELV・E-wasteに係る「拡大生産者責任」の浸透が喫緊の課題となっており、健全な自動車リサイクル等の在り方が模索されている。本成果は、ELV解体現場における新興代替難燃剤 OPEsの汚染、環境放出、曝露リスクを世界に先駆けて解明するとともに、継続的なモニタリングの必要性を示唆している。
情報源 |
愛媛大学 プレスリリース
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機関 | 愛媛大学 ベトナム国家大学ハノイ校 国立環境研究所 |
分野 |
ごみ・リサイクル 健康・化学物質 |
キーワード | ベトナム | 有害化学物質 | 複合汚染 | E-waste | ELV | 使用済み自動車 | 臭素系難燃剤 | リン酸エステル系難燃剤 | ErP指令 | ハロゲン化難燃剤 |
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