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 象牙の適正取引、国内経済の後退と文化的シフトが後押し

発表日:2022.11.18


  英国スターリング大学のローラ・トーマス・ウォルターズ博士率いる研究チームは、日本の象牙需要が“劇的な減少”を遂げ、低いレベルを維持している原因を分析評価した。日本では、古くから象牙製の根付け、印籠、櫛、箸が珍重され、印章・アクセサリー、楽器パーツの原材料として象牙が利用されてきた。今から40年前、日本は世界最大の象牙消費国(輸入国)であったが、1980年代初頭に未加工象牙の輸入量は減少傾向に転じている。日本は1980年に象牙等の国際取引を規制するワシントン条約(以下「CITES」)を批准し、1992年に制定された「種の保存法」の下で違法な国内取引の防止や、適切な象牙の利用を進めている(例:死亡個体に由来する象牙の合法的な利用等)。他方、象牙を目的とする密猟はとどまることを知らず、CITESで取引が原則禁止とされているアフリカゾウはもとより、インドゾウの個体数減少が懸念されている。同博士は、専ら野生動物の需要削減に向けた行動変容に関する研究に取り組んでおり、「需要減少が顕著な事例の精査が極めて重要」と主張している。今回、同チーム(構成:同大学、国立環境研究所ほか英国2大学)が協力し、日本の象牙取引に関する過去40年間のデータ分析や利害関係者へのインタビュー、文献レビューを行い、象牙輸入量の減少に関するさまざまな仮説の検証を試みた。日本の場合、1980年のCITES批准が効果的にはたらき、1990年代の経済不況が高価な象牙製品を派手に消費する文化をシフトさせたと総括している。また、日本(人)の象牙需要は元来、“売りに出されていれば買うが、出ていなければ探さない”という受動的なものであることを指摘している。さらに、CITES締結に伴うNGOのキャンペーンは消費者に直接影響を与えなかったが、小売業への間接的な圧力に繋がり、店頭での象牙の存在をさらに減少させたことが明らかになったという。違法取引(闇市場)の抑制において「政府への信頼」は何よりも重要で、政策立案者は、象牙の持続可能な管理に向けて自国の需要減少を考慮する必要があると提言している。現在残っている日本の象牙市場は既存製品の交換を主目的としたものであるため、日本は野生生物取引の減少に貢献する国であり、世界貿易の観点における主要な消費国ではなくなった、と結論している(輸入量では中国・東南アジア諸国が上位)。

情報源 国立環境研究所 報道発表
スターリング大学 news
機関 国立環境研究所 スターリング大学
分野 自然環境
キーワード ワシントン条約 | 違法取引 | 密猟 | CITES | アフリカゾウ | 種の保存法 | 象牙 | 行動変容 | 野生生物取引 | 闇市場
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