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 奄美大島・徳之島のOUV、保全状況モニタリングの起点データ整う

発表日:2023.02.03


  国立環境研究所、鹿児島大学、北海道大学、琉球大学および(一社)九州オープンユニバーシティの研究グループは、奄美大島・徳之島の「顕著な普遍的価値(OUV: Outstanding Universal Value)」を生物地理学的なアプローチを用いて評価した。2021年7月、両島は沖縄本島北部・西表島とともに「世界自然遺産」として登録された。両島ほか6島からなる奄美群島は大陸から約155万年前に隔離され、近隣の島々と分離・結合を繰り返して形作られた。そうした稀有な地史を背景とするユニークな自然生態系が形成されたことから、世界的にも珍しい動植物や貴重な固有種・希少種が数多く見られる。世界自然遺産の審査では、OUVの有無を判断する4つのクライテリアのうち「生物多様性」が比類なきものと評価されている(c.f. 屋久島は生態系と自然美の2項目に該当)。他方、日本を含む「世界遺産条約」締結国は、自国の領域内に存在する遺産の保護義務を履行するために最善を尽くす必要がある(同条約第4条)。遺産の保全状況を測定・評価する際の主要な指標、将来にわたって実施するモニタリングのベースライン、影響を及ぼす諸条件などを国際機関に提示しなければならない。本研究では、3つのエリア(奄美群島・沖縄島北部・南九州)・計16地点において全維管束植物を対象とした植物群落の調査を行い、結果を比較することで、両島の特異性・独自性を浮き彫りにしている。多様度プロファイルから、両島の植物相は常緑広葉樹やシダ植物が豊富で、熱帯・亜熱帯で多様化している分類群が多くみられるという特徴が明らかになった。また、種多様性の詳細解析により、樹木の足元に分布する草本層は絶滅危惧種・固有種の割合が高く、地域の種多様性を特徴づけるものであることが示唆された。さらに、それらの特徴は地史のみならず、気温などの環境要因に規定されているという新知見も得られた。総じて、両島は紛れもなく生物多様性のホットスポットであり、草本層の多様性が地域の生物多様性を規定する要因となり得ることが実証された。本成果は世界自然遺産の植物相全体をとらまえ、定量的に評価した初めての事例であり、順応的管理に向けたモニタリングの起点データを提供するものとなる。

情報源 国立環境研究所 報道発表
鹿児島大学 トピックス
北海道大学 プレスリリース(研究発表)
琉球大学 研究成果
機関 国立環境研究所 鹿児島大学 北海道大学 琉球大学 (一社)九州オープンユニバーシティ
分野 自然環境
キーワード 常緑広葉樹林 | ホットスポット | 世界自然遺産 | 維管束植物 | β多様性 | α多様性 | 環境省モニタリングサイト1000プロジェクト | 顕著な普遍的価値 | 群集構造 | 奄美大島・徳之島
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