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 コシヒカリの有用遺伝子、高CO2環境下における多収品種の増収にも有効

発表日:2023.03.31


  国際農研、農研機構、名古屋大学ほか4大学・研究機関の共同研究グループは、コシヒカリ由来の遺伝子「MP3: MORE PANICLES 3」を導入した多収品種を作出し、高CO2環境下において増収効果が認められたと発表した。MP3は、12本あるイネ(Oryza sativa)の3番目の染色体上にある縞(バンド)。イネの量的形質に関与する遺伝子座(QTL)に相当し、コシヒカリをはじめとするジャポニカイネの場合は稲穂の基となる「腋芽(えきが)」の生長を促し、穂数の増加に寄与する。国際農研は、インディカイネである多収品種「タカナリ」のMP3をコシヒカリ由来のMP3に置換し、理想的なイネを開発する取り組み(IPA: ideal plant architecture)を進めている。サブサハラアフリカの稲作を支援するプロジェクトでは、MP3を置換したタカナリの準同質遺伝子系統(NIL: Near-Isogenic Line)が養分欠乏土壌における穂数不足の緩和に資することを確認している(Takai, T. et al., 2021)。本研究は、IPAの一環として、地球規模の課題「気候変動下における持続可能な作物生産」の実現に向けてデザインされたもの。気温上昇に伴う生産性の大幅な低下が懸念されているが、大気CO2濃度の上昇はイネの光合成にとって有利に働く。NILは1つの穂に多くの籾を生産させるインディカイネの形質である一穂籾数を維持しつつ、穂数が元品種(タカナリ)よりも20~30%多い。農研機構・農業環境研究所の実験拠点「FACE: Free-Air CO2 Enrichment(所在地:茨城県つくばみらい市)」において、外気よりも約200 ppm高いCO2濃度環境(580 ppm)でNILを栽培した結果、6%多収(タカナリ比)となることが明らかになった。世界人口の半数以上がコメを主食としている。世界の食料危機回避に向けたMP3の応用展開が期待される。

情報源 国際農林水産業研究センター プレスリリース
理化学研究所 研究成果(プレスリリース)
名古屋大学 研究成果発信サイト
横浜市立大学 YCU RESEARCH
明治大学 プレスリリース
機関 国際農林水産業研究センター 農業・食品産業技術総合研究機構 理化学研究所 名古屋大学 横浜市立大学
分野 地球環境
環境総合
キーワード タカナリ | 高CO2環境 | MP3 | 多収品種 | ジャポニカイネ | 腋芽 | ideal plant architecture | 準同質遺伝子系統 | 一穂籾数 | FACE
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