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 シジュウカラガンの“渡り”ルートが判明 日露米の共同放鳥地が新繁殖地に

発表日:2023.05.22


  日本雁を保護する会(JAWGP)と山階鳥類研究所(山階鳥研)は、国内で越冬するシジュウカラガンの渡りルートや、千島列島のエカルマ島(北緯48度、東経154度付近)の主要な生息地を解明した。シジュウカラガンは白い頬の模様と白い首輪模様、平らな頭部が特徴的なガンの仲間。千島列島やアリューシャン列島の島々で繁殖し、日本またはアメリカ大陸の西海岸で越冬する。ごく一般的な冬鳥として親しまれていたが、20世紀初めに両列島に放された毛皮採取目的のキツネに捕食され、生息数・飛来数は激減した。ほぼ絶滅したいう見方が強かったが、1960年代にアリューシャン列島で少数の個体が見つかり、JAWGPの呼びかけにより1980年から「渡り復活」の取り組みが始まった。この活動は日露米3カ国の国際共同事業に発展し、1995~2010年にかけてエカルマ島での放鳥が行われた(支援組織:仙台市八木山動物公園、総放鳥数:551羽)。その後、シジュウカラガンの国内飛来数は順調に回復し、近年では宮城県の化女沼・蕪栗沼、秋田県の八郎潟などで1シーズンに8,000羽を超える個体(群)が確認されるようになった(令和3年度公表値)。しかし、絶滅の危機を乗り越えて復活し、個体数が増加傾向にあるものの、国内で越冬するシジュウカラガンの渡りルートや繁殖地は特定できていなかった。そこでJAWGPと山階鳥研は、2021年12月に渡りの中継地である秋田県大潟村でシジュウカラガン9羽に首環型発信機を取り付け、移動状況を追跡する調査に着手した。その結果、9羽のうち2羽が宮城県北部の仙北平野で越冬し、千島列島沿いに北上してエカルマ島へ渡り、2022年10月~2023年4月にかけて千島列島沿いに南下して日本に帰還する春・秋の渡り経路が確認された。また、繁殖期間中はエカルマ島に留まり、同島の南東部で活動している様子が確認できたことから、同地が主要な生息地や営巣地となっている可能性が示唆された。今後の適切な個体群管理にとって重要な情報が得られた、と報じている。なお、シジュウカラガンは環境省RL2020で絶滅危惧1A類(CR)に指定されており、日本に渡来するガン類の研究と保全についての功績が認められ、JAWGPは第22回山階芳麿賞を受賞している(2022年7月贈賞)。

情報源 (公財)山階鳥類研究所 プレスリリース
機関 (公財)山階鳥類研究所
分野 自然環境
キーワード 繁殖 | 越冬 | シジュウカラガン | 渡り | 千島列島 | 八郎潟 | エカルマ島 | 仙北平野 | 首環型発信機 | 日本雁を保護する会
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