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 ウナギ釣り師の通説は新たな光害(ひかりがい)?!

発表日:2023.07.18


  九州⼤学⼤学院農学研究院の松重助教と北九州市⽴⾃然史・歴史博物館の⽇⽐野学芸員は、ニホンウナギ(以下「ウナギ」)の摂餌行動と夜間の⼈⼯照明(ALAN: artificial light at night)の関係を一般化することに成功した。都市化の影響と見られる野生生物の分布や行動の変化が多数報告されている。ALANは日没後の人間生活に欠かすことのできないインフラであるが、過剰かつ不適切な配置は、人間や昆虫・鳥類、魚類に悪影響を及ぼす。全国各地の主要な河川や水利施設にはALANが設置されており、そうした河川等のなかにはウナギが一生の大部分を過ごす場所がある。ウナギは夜行性捕食者であるため、エサ釣りや罠を使った捕獲は夕まずめ(日没前後)以降に行われている。最もよく釣れるタイミング(時合い)は日没直後と言われており、ウナギ釣り師の間では“水辺の照明が点灯している間は釣れない”という情報が広まっている(以下「経験則」)。本研究は、経験則から“⽔辺の⼈⼯照明は⽇没直後におけるウナギの摂餌活性の上昇を妨げ、摂餌活性の継時パターンを変化させる”という仮説を導き出し、その検証を試みたもの。かつて頻繁にウナギ釣りに出かけていた、⽇⽐野学芸員の釣行記録が大いに貢献した。釣り場ポイントはもとより、竿出し・納竿の時刻、照明の点灯・消灯時刻、ウナギの釣獲時刻などが克明に記録されていたという(東海地方17地点、全49回分)。「釣獲頻度」を摂餌活性の指標とみなし、松重助教が統計的な分析を行ったところ、経験則と合致する複数の知見が得られ、上記の仮説は裏付けられた。他方、現地住民によってウナギ筒と呼ばれる罠が仕掛けられていた釣り場では、照明による摂餌活性の変化はみられなかった。これは隠れ家(例:河床堆積物の隙間等)さえあれば摂餌活性は低下しないことを意味している。本成果は、ALANの時空間的な拡大と、天然の隠れ家の減少(コンクリート護岸・三面張り水路の増加)がウナギにおよぼす影響の実例を示しつつ、“⽔圏⽣態系への光害”という比較的新しい環境問題への関心を誘うものとなっている(掲載誌:Environmental Biology of Fishes)。

情報源 九州大学 ニュース(研究成果)
機関 九州大学 北九州市⽴⾃然史・歴史博物館
分野 自然環境
キーワード 都市化 | 光害 | ニホンウナギ | 夜間の⼈⼯照明 | 夜行性捕食者 | 釣行記録 | 釣獲頻度 | 摂餌活性 | 隠れ家 | ⽔圏⽣態系
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