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 貝原益軒の記載がきっかけ?“光るトビムシ“の学術研究が大進展!

発表日:2023.08.23


  横浜国立大学、多摩六都科学館、名古屋大学および中部大学の研究チームは、300年以上謎に包まれてきた“光るトビムシ”の正体を突き止めた。光を放つ生き物は夏の風物詩・ホタルだけではない。身近な環境から深海に至るまで多様な発光生物が存在している。それらの発光性は種間、雌雄によって異なり、なぜ光るのか、どのような仕組みで光っているのか未解明なものも多い。トビムシ目は翅をもたない6本脚の小型節足動物。有翅昆虫類よりも先に地球上に現れ、森林土壌をはじめとする多様な環境に適応し、生態学的ピラミッドの根底を支えている。トビムシ(広義)は、18世紀初頭に編纂された本邦の古書(大和本草・巻之十四および諸品図下)に記載されている。ノミに似た湿地を好む生物とされ、 “ホタルのごとく光る”種の存在が補筆されている。時を経て、2000年頃に東京都下で体長3ミリのアカイボトビムシ(Lobella sp.)が撮影され、刺激を受けて発光するメカニズムの一端が明らかになっている。他方、DNAバーコーディングによって、現生トビムシ(全世界で8,000種ほど)の分類学的な研究は大いに前進した。本研究では、大和本草の記載がLobella sp.を指しているという仮定に基づき、日本産“光るトビムシ”唯一のエビデンスである発光生物DNAバーコードプロジェクトのデータ(Oba et al., 2011)を手がかりに種同定などを行った。その結果、“光るトビムシ”の正体はLobella sp.ではなく、ザウテルアカイボトビムシ(Lobella sauteri)であることが判明し、同種が緑色に発光する様子を撮像することに成功した。また、群集に音響装置で発光を促す、オリジナリティ溢れる手法を開発し、既存種のなかから新たに発光種(3種)を発見する快挙を成し遂げている。総じて、既存種は発光する種と発光しない種が併存する類まれな系統であり、トビムシの知られざる遺伝的多様性がうかがわれた。いずれも世界初の成果であり、一連の成果を踏まえて、和名の付与などを含む分類の整理や非発光種の新種記載も行われている。発光トビムシの理解深化はもとより、発光生物の多様性や起源の解明に向けた研究(発光生物学)の大きな前進につながる成果と言える(掲載誌:Zootaxa、DOI:10.11646/ZOOTAXA.5325.1.4)。

情報源 横浜国立大学 プレスリリース
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機関 横浜国立大学 多摩六都科学館 名古屋大学 中部大学
分野 自然環境
キーワード 節足動物 | トビムシ | 有翅昆虫類 | 大和本草 | アカイボトビムシ | Lobella sp. | DNAバーコードデータ | 種同定 | ザウテルアカイボトビムシ | 発光生物
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