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 うんちで老化度を測る!野生イルカの非侵襲的な年齢推定法(第2弾)

発表日:2023.12.18


  「年齢」は個人(個体)の基本属性であり、統計学的な調査分析に広く活用されている。野生動物の場合、誕生年や暦年齢の把握は容易ではない。よしんば出産・誕生のタイミングをとらえることができたとしても、個体が識別できる状態を確保し、継続的に観察するために多大な労力を要する。半世紀あるいはそれ以上長生きする哺乳類の年齢推定はさらに難しく、数々の年齢推定法が考案、試行されてきた。しかし、体のサイズや死亡個体の骨などに基づく手法は適用できる範囲・機会が限られており、生体を捕獲して歯などを採取・分析する手法は個体に大きな負担を与える。長寿命動物のライフサイクル(生活史)全体にわたって適用できる、非侵襲的な年齢推定法の確立が希求されている。三重大学大学院の八木さんらは、野生動物の加齢に伴う変化に着目し、加齢に伴ってミナミハンドウイルカ(寿命:45~50年程度)の腹部に形成される斑点パターンを撮像し、数値情報に変換して解析する「非侵襲的な年齢推定法」を提案している。本研究では、京都大学野生動物研究センターの村山教授、東海大学の北准教授らと共に、遺伝子レベルの変化を指標とする手法の適用可能性を検証している。老化は、外見のみならず組織や細胞の変化にも表れ、近年では老化とDNAのエピジェネティックな修飾(DNAメチル化など)の関係が明らかになりつつある。クジラの皮膚の断片を用いて「DNAメチル化」の進行度(遺伝子間の差異)を分析し、加齢を測る指標(通称:エピジェネティッククロック)として活用する研究なども進められている。今回、御蔵島観光協会の協力のもと、ミナミハンドウイルカが海中に排泄した糞便サンプルを30頭分採取することができた(同島周辺海域の個体識別数:150頭)。得られたサンプルからDNAを抽出し、メチル化感受性高解像度融解曲線(MS-HRM)解析によるメチル化率の定量を行った結果、メチル化率と実年齢の間に相関関係が認められ、平均5歳程度の誤差で年齢を推定できることが明らかになった。陸生哺乳類への応用も示唆され、“画期的な研究成果”と訴求している。より簡単に試料が手に入ることを活かして個体群を網羅した年齢推定を行い、集団の人口ピラミッドを描くことができれば、野生動物の保護・管理施策が大いに前進すると思われる(掲載誌:Molecular Ecology Resources、DOI:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1755-0998.13906)。

情報源 京都大学 Latest research news
機関 三重大学 京都大学 東海大学 (一社)御蔵島観光協会
分野 自然環境
キーワード 野生動物 | 御蔵島 | 生活史 | ミナミハンドウイルカ | DNAメチル化 | 非侵襲的 | エピジェネティッククロック | エピジェネティック | 加齢 | 老化
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