北海道大学総合博物館のボランティアである中川氏と佐藤研究員、首藤助教、神奈川県立生命の星・地球博物館の田中学芸員らの研究グループは、国内でこれまで認識されていなかったイネ科ウシノケグサ属の2種が北海道に分布していることを新たに報告した。―――2017年に中川氏と佐藤研究員は、大雪山系忠別岳で見慣れないウシノケグサ属の植物を発見した。この植物の葉の断面には七つの厚壁組織があり、F. probatovaeという植物であることが判明した。この植物は国内中部地方の高山にも分布することが指摘されていたが、その後国内の文献には全く登場していなかったため、タイプ標本の産地に由来する「サハリンウシノケグサ」という和名が提案された。さらに、知床での現地調査と北海道大学総合博物館の標本調査により、これまで国内で知られていたウシノケグサ属の他種でもサハリンウシノケグサでもない新たな一種が認識された。この植物は葉の縁と中央に三つの厚壁組織があり、F. auriculataと同定された。日本国内では初確認となり、産地の一つである札幌市の定山渓天狗岳に由来する新和名「ジョウテンウシノケグサ」が提案された。この研究成果は、2024年6月20日発行のJournal of Japanese Botany 99巻3号および2024年10月20日発行の同5号に掲載された。