産業技術総合研究所(産総研)、北里大学および琉球大学は、低濃度のリン酸塩がサンゴの骨格形成に与える影響を明らかにした。──世界的にサンゴが減少し、海水温上昇や沿岸開発などの深刻な影響が懸念されている。陸域から供給される過剰な栄養塩もサンゴ礁衰退の一因と見られているが、サンゴが生育する海域で検出されるリン酸塩などは低濃度である。そのため、リン酸塩は植物プランクトンの増殖を促進し、サンゴに二次的な影響を及ぼすものの、直接的な影響はないと考えられてきた。──今回、産総研らは、リン酸塩濃度と飼育海水量を変えて稚サンゴを飼育し、骨格形成量を精密に測定する実験を行った。その結果、リン酸塩濃度が低くても、飼育海水量が増加すると骨格形成量が低下することが明らかになった。すなわち、リン酸塩の負荷量はサンゴの骨格形成に重要な役割を果たしており、リン酸塩濃度が0.5 µMレベルであっても、海水の流量が多い環境であれば骨格形成が阻害されることが示唆された。──この成果は、低濃度であってもリン酸塩がサンゴに対して"塵も積もれば山となる"影響をおよぼすことを裏付けたものであり、高次の廃水処理などを考慮した効果的な保全策の立案に寄与するものと言える。