東京大学大学院農学生命科学研究科の研究グループは、20世紀初頭までの里山荒廃が下流環境に与えた長期的影響を解明した。公表論文(掲載誌:Earth Surface Processes and Landforms)の概要は以下のとおり。──山岳地帯は下流の平野や海岸への土砂供給源であるため、土地被覆の変化に伴う土砂流出の変化を理解することが重要である。日本では、20世紀初頭以前に過剰利用によって劣化した山岳地帯が現在は森林化されているが、この期間中の土砂動態の変化についてはほとんど知られていない。東京大学生態水文学研究所(旧愛知演習林、所在地:愛知県瀬戸市)の白坂実験流域では、1929年から土砂流出が監視されている。本研究では、この長期土砂監視プログラムの詳細を説明し、土砂流出の変化を示している。1930年代には土砂生産量は約1,000 m3/km2/年であり、1990年代には約100 m3/km2/年に減少した。この結果は、森林回復と流域の土砂流出の減少の間の時間差は、人為的撹乱の持続的な影響を示しており、河道貯留に起因すると考えられた。さらに、長期データは、記録的な降雨イベントの影響が過去の人為的撹乱の影響よりも小さいことも示している。──研究者らは「山から流出してくる土砂の量は現在の山の被覆状況だけでなく、過去の被覆の変遷の影響を受けていることを示している。持続的な国土管理のためには、私たちの自然観を見直す必要があるのではないだろうか」と投げかけている。
情報源 |
東京大学大学院農学生命科学研究科 NEWS
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機関 | 東京大学大学院農学生命科学研究科 |
分野 |
自然環境 |
キーワード | 東京大学 | 演習林 | 環境変化 | 森林回復 | 土砂流出 | 長期観測 | 里山荒廃 | はげ山 | 国土管理 | 自然観 |
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