東京大学大気海洋研究所と東京科学大学の研究グループは、魚類のエネルギー消費量を高精度に復元する新たな手法を開発した。本手法は、魚の耳石(炭酸カルシウムで構成される硬組織)に含まれる天然の放射性炭素(Δ¹⁴C)を分析することで、魚の呼吸代謝に由来する炭素量を定量化し、エネルギー消費履歴を推定するものである。
従来の手法では、魚種や成長段階によって異なる補正係数の影響を受け、比較が困難であったが、放射性炭素を用いることでこれらの制約を回避できる。研究対象となったアマノガワテンジクダイを用いた実験では、耳石の炭素源を世界で初めて高精度で評価することに成功した。――本成果により、魚類のエネルギー消費量を種や成長段階を問わず比較可能となり、温暖化などの気候変動に対する魚の生理・代謝応答の予測や、水産資源管理への応用が期待される(掲載誌:Limnology and Oceanography Letters)。