海洋研究開発機構(JAMSTEC)、北海道大学および東京海洋大学は、北極の海氷下で"床暖房"の役割を担う海洋亜表層の蓄熱が急速に進行していることを明らかにした。──本成果は20年間にわたり蓄積された海洋地球研究船「みらい」の長期航海データによって得られた。今回、太平洋起源水の水温上昇と海流の強化が、海洋亜表層での蓄熱を促進していることが示された。また、ベーリング海峡から流入する暖かい太平洋起源水が、チュクチボーダーランドに向かう海流と組み合わさり、海氷にとって床暖房の役割を果たす海洋亜表層での蓄熱が進行していることが明らかになった。チュクチボーダーランド海域では、1999年から2020年にかけて海洋亜表層の貯熱量が約1.8倍に増加しており、海氷の融解が促進され、結氷が抑制されるおそれがあるという。──海洋亜表層に蓄積された熱が海面付近まで伝われば、海氷の減少が加速し、水産有用種の生息域拡大にもつながる可能性がある。JAMSTECらは、北極航路や水産資源管理の運用体制を整備する上で、継続的なモニタリング観測は欠かせないと指摘している。