情報通信研究機構(NICT)の研究グループは、アバターの顔表情がヒトのリスク選択に影響を与えることを明らかにした。研究によると、対峙する相手がヒトではなくアバターの場合、ヒトはリスクを取りやすくなる。このリスク選択の変化は、アバターの顔表情が曖昧であることが好意的に評価されるためであることがわかった。さらに、fMRIデータの解析から、この評価は脳の扁桃体の活動に依存することが示された。──この成果は、仮想空間や拡張現実など、アバターを介したコミュニケーションが人間の意思決定に与える影響の解明に迫るものであり、行動変容を早発する脳ダイナミクスの理解を深め、アバター共生社会やサイバー社会の利点と注意点などを提供するものとなっている(掲載誌:PLOS Biology)。──【用語解説】「扁桃体」は、脳の辺縁系に属する構造で、恐怖や不安などの情動処理や顔の表情理解を司る役割を持っている。「fMRI実験」は、脳の活動を領域の血流量の変化を用いて測定する非侵襲的な画像技術であり、ヒトの脳部位の機能を詳細に調べることができる。