損害保険料率算出機構(以下「損保料率機構」)と防災科学技術研究所(防災科研)は、「雹(ひょう)災リスク」の評価に向けた共同研究契約を締結した。両機関は、損害保険支払データと高性能気象レーダ(MPレーダ)を組み合わせることで、網羅性のある降雹データセットの整備を目指す。
損保料率機構は、損害保険業法に基づき保険料率の算出に必要な統計データを収集・分析する公益性の高い組織であり、保険業界全体のリスク評価基盤を担っている。一方、防災科研は、自然災害の科学的解明と防災技術の開発を目的とする国立研究開発法人である。
近年、兵庫県(2024年)、群馬県(2023年)、関東地方(2022年)などで大規模な雹災害が相次ぎ、それらの保険金支払額は数百億円から千億円超に達している。雹は局地的かつ一過性の気象現象であり、痕跡が残りにくいため、従来の観測手法では実態把握が困難であった。また、MPレーダを用いた降雹域の推定技術の研究が盛んに進められているが、発災時の実データが十分に蓄積されておらず、推定精度の検証と技術の高度化を阻んでいた。
本共同研究では、損保料率機構が保有する保険金支払データを、防災科研の気象レーダ解析と統合することで、降雹域の推定精度を高めるとともに、地域性や頻度の把握を可能にする。これにより、雹災リスクの定量的評価が進み、合理的な保険料率の算出や、将来的な気候変動の影響評価、降雹予測の精度向上など、防災・減災への応用が期待される。──両機関は、今後もデータ連携を通じて、災害リスクの科学的評価と社会的対応力の向上に貢献していく方針を共有している。