長崎大学総合生産科学域(水産学系)・松下教授らの研究グループは、長崎市たちばな漁業協同組合と連携し、橘湾における海底ごみの実態とその漁業資源への影響を調査した。調査は2023年4月から実施され、底びき網に入網するごみの量や種類を記録・分析した。
その結果、橘湾の海底ごみの密度は、東京湾、鹿児島湾、日高湾、常磐沖、東シナ海など、同様の調査が行われた他の日本周辺海域と比較して最も少ないことが明らかとなった。特に、たちばな漁協の漁業者が日常的に操業中に入網したごみを持ち帰り、適切に処分していることが、海底ごみの少なさに寄与している可能性があると考えられる。
調査では、入網したごみの95%以上がプラスチック類で構成されていた。また、ビニール袋などのごみが網に入ると、網目を塞ぐことで小型生物の逃避を妨げることが確認された。具体的には、ビニール袋5枚が入網した場合、小型のアカエビの約40%が網目から逃げられずに捕獲されるという結果が得られた。これは、海底ごみが漁獲構成に影響を与え、資源の持続可能性に悪影響を及ぼす可能性を示唆している。
本研究は、環境省および独立行政法人環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF23S21020)により実施された。研究成果は、2025年5月15日付で国際誌『Marine Pollution Bulletin』に掲載された。