東京大学は、メルカリとの共同研究により、フリマアプリに出品された古着一着ごとの環境負荷(GHG)をAIで自動推計する手法を確立した(LCM2025国際会議発表)。 製品の環境負荷を評価する「ライフサイクルアセスメント(LCA)」には膨大な一次データの収集が必要であり、一点ものの中古品の評価は極めて困難であった。――本研究では、画像と言語を同時に処理できるビジョン言語モデル(VLM)を活用し、出品者が投稿した商品画像(タグなど)や説明文から、素材組成・サイズ・洗濯方法・推定使用回数の4項目を自動抽出。これらを既存のGHG排出係数データベース(AIST-IDEAなど)と連携させることで、衣類のライフサイクル全体におけるGHG排出量を算定するフレームワークを構築した。
検証では、メルカリに出品されたトップス3,500点を対象に、素材組成で81.6%、サイズで92.3%という高精度な抽出結果が得られた。洗濯方法の抽出精度は56.6%に留まったが、AIが非構造化データから環境評価に必要な情報を高精度で抽出できる可能性が示された。これまでのGHG評価では、使用段階(洗濯頻度など)に焦点が当てられていたが、本研究により、素材組成の違いがGHG排出量に与える影響の大きさが明らかとなった。特に混紡素材の多様性が排出量の主要因であることが示され、素材選定の重要性が浮き彫りとなった。
本手法は衣類以外の製品カテゴリにも応用可能であり、企業の環境情報開示やスコープ3排出量の算定に貢献する。研究成果は、東京大学インクルーシブ工学連携研究機構とメルカリR4Dラボによる「価値交換工学」の共同研究の一環である。