琉球大学理学部の小枝圭太助教、佐藤真央研究員、卒業生で生物系ライターの平坂寛氏は、沖縄県石垣島沖の水深210mに広がる「トワイライトゾーン」で新種のハゼ科魚類を発見した。本種はヤツシハゼ属(Vanderhorstia)の仲間で、既知の33種と比較して鰭に鮮やかな黄色の帯が体を取り囲むように走るなど、色彩と形態の特徴が明瞭に異なることが確認された(掲載誌:Ichthyological Research)。
トワイライトゾーンは、海洋学でいう中深層の浅い部分に相当し、この領域は生物多様性が高い一方、調査が困難なため未記載種が多く存在する可能性がある。沖縄近海のトワイライトゾーンは光がわずかに届く深海手前の環境であり、トロール漁業が行われないため魚類相の情報が乏しい。近年、新種や希少種の発見が相次ぐ中、琉球大学は魚類多様性の解明を目的に調査を進めてきた。
今回の標本は2022年に平坂氏が釣り調査で採集し、大学に持ち込まれたことで研究が開始された。比較検討の結果、鱗の枚数や各部位の長さ、体側の斑紋など複数の形態的差異が明らかになり、新種として記載された。「Vanderhorstia supersaiyan(ヴァンダーホルスティア・スーパーサイヤン)」と命名され、標準和名として「エレキハゼ」が提唱された。命名の由来は、背鰭から尾鰭にかけて走る黄色の帯が人気漫画「ドラゴンボール」のスーパーサイヤ人を彷彿とさせること、さらに放電を思わせる模様であることにある。研究チームは、「今回の発見が沖縄のトワイライトゾーンに未記載種が多数存在する可能性を示すとともに、深海生態系研究の未発展性を浮き彫りにした成果である」と述べている。研究は笹川平和財団オーシャンショット助成事業、JSPS科研費、JST CRESTの支援を受けて行われた。
| 情報源 |
琉球大学 研究成果
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| 機関 | 琉球大学 |
| 分野 |
自然環境 |
| キーワード | 標準和名 | ハゼ科 | 魚類多様性 | 新種記載 | 形態比較 | 深海魚類 | Ichthyological Research | Vanderhorstia | トワイライトゾーン | 沖縄近海 |
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