東邦大学、水産研究・教育機構、日本大学、地球・人間環境フォーラム、茨城県自然博物館の研究グループは、日本国内の外来魚カムルチー(雷魚)から、アジア大陸原産で日本未記録の寄生虫「Azygia hwangtsiyui(和名:ライギョノネドコムシ)」を発見したと発表した。本研究成果は2025年5月2日付で学術誌『Journal of Helminthology』に掲載された。
本寄生虫は、成虫がカムルチーに寄生し、ヒメタニシとヌマチチブを中間・待機宿主として生活史を完結させる。研究グループは、関東から九州にかけての複数の水域で本種の分布を確認し、日本国内での定着が進んでいることを明らかにした。遺伝子解析の結果からは、ライギョノネドコムシが複数回にわたり日本に侵入した可能性が示唆されている。
カムルチーは1920年ごろに観賞用として日本に導入された外来魚であり、現在もネットオークションなどで流通している。寄生虫の侵入経路としては、カムルチーとともに持ち込まれた可能性のほか、飼育目的で輸入された淡水魚や貝類に付着していたケースも考えられる。寄生虫は宿主の体内に存在するため、外見からは発見が難しく、外来寄生虫の侵入実態は把握されにくい。
本研究は、外来寄生虫の侵入経緯と生活史を明らかにすることで、今後の防除対策やリスク評価に資する基礎情報を提供するものである。研究グループは、魚や貝の無断放流が寄生虫の拡散を助長するリスクを強調し、慎重な管理の必要性を指摘している。なお、ライギョノネドコムシのヒトへの感染例は報告されていない。