東京大学大学院農学生命科学研究科、東京農工大学、シンガポール国立大学などの研究チームは、東南アジア6カ国の時系列データを用いたパネルデータ分析により、マングローブ林面積の回復要因を定量的に特定した。本研究は、衛星データに基づく面積変動と複数の社会・環境要因を組み合わせ、交絡要因を制御した固定効果モデルを活用している(掲載誌:Forest Ecology and Management)。
マングローブ林は炭素貯留能力や気候調節機能を持つ重要な生態系であるが、2050年までに世界の半数以上が崩壊の危機に直面するとされ、保全の緊急性が国際的に指摘されている。一方で、一部地域では面積増加が報告されているが、その要因に関する科学的知見は不足していた。研究チームが分析を行った結果、「面積増加に有意に寄与する要因」として、①再植林などの管理努力(p=0.014)、②OECMを含む保全地域や保護区の拡大(p=0.019)、③政策決定プロセスへの市民参画(p=0.085)の影響が挙げられた。一方、「干ばつ強度の上昇」は負の影響を及ぼしていた(p=0.026)。また、気温や海面上昇などの気候変動要因は統計的に有意な傾向を示さず、現状では限定的な影響にとどまることが示唆された。
研究チームは「近年の回復は自然再生ではなく、人為的努力による成果である」と述べており、今後の政策設計における植林・保全活動の重要性を強調している。
| 情報源 |
東京大学大学院農学生命科学研究科 研究成果
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| 機関 | 東京大学大学院農学生命科学研究科 東京農工大学 シンガポール国立大学 |
| 分野 |
自然環境 |
| キーワード | 気候変動 | 市民参画 | 保全地域 | 生態系回復 | マングローブ林 | OECM | 固定効果モデル | パネルデータ分析 | 再植林 | 干ばつ強度 |
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