龍谷大学生物多様性科学研究センターの鄭琬萱博士・三木健教授ら国際共同研究グループは、台湾・翡翠ダムにおける水域微生物群集の9年間にわたる長期観測データを解析し、生物多様性が「生態系の多機能性(EMF: Ecosystem Multifunctionality)」を一貫して支えていることを実証した(掲載誌:Ecology Letters)。
EMFは、有機物分解や生物生産など、環境の健全性を保つ複数の機能からなる。本研究では、構造方程式モデリング(SEM)を用いて、微生物多様性・EMF・環境要因の因果関係を可視化した。その結果、原核生物の多様性が短期・季節・長期といった異なる時間スケールにおいて、常にEMFを高める役割を果たしていることが明らかになった。一方、降水量・水温解析には・リン濃度などの環境要因は、特定の時間スケールに限定して影響を及ぼしており、長期的な水質改善によるリン濃度の低下が微生物多様性を高め、結果としてEMFがさらに促進されるという好循環が確認された。これらの新知見は、生物多様性が環境要因の変動を仲介し、EMFの安定性を保つ“調整役”として機能していることを示唆している。
本研究は、自然環境における複雑な変動について、信頼性の高いエビデンスを提供するものであり、三木教授は、「長期観測・モニタリング研究は、地道な活動が何年も続き成果が出るまで時間がかかってしまいます。それでも生態系や生物多様性について、他の方法では得られないとても貴重な知見の基盤となるものなので、琵琶湖でも同じような研究ができたらうれしいです」と述べている。
情報源 |
龍谷大学 ニュース
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機関 | 龍谷大学 |
分野 |
自然環境 |
キーワード | 生物多様性 | 気候変動 | 環境変動 | 水質改善 | 淡水生態系 | 長期モニタリング | 構造方程式モデリング | 微生物群集 | 生態系多機能性 | 時間スケール |
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