東北大学流体科学研究所の小宮敦樹教授らの研究グループは、天然ゴムの弾性熱量効果を活用した新たな熱-動力変換機構を提案し、工場などから排出される200℃未満の低温廃熱から高い動力エネルギーを得ることに成功した。共同研究にはフランス国立応用科学院リヨン校(INSA Lyon)およびフランス国立科学研究センター(CNRS)の研究者も参加している。
弾性熱量効果とは、弾性体が急激に変形する際に発熱・吸熱を伴う現象であり、近年は環境発電などへの応用が注目されている。従来の熱電材料による廃熱発電は変換効率が低く、代替技術の開発が求められていた。本研究では、天然ゴムの弾性熱量効果を利用し、熱交換器を通じて温度制御された作動流体をゴムチューブに流すことで、ゴムの伸縮運動を発生させ、可動部を往復運動させる機構を構築した。――実験では、温度差25℃、ゴムの伸び率50%の条件下で、1サイクルあたり最大150mJ/cm³のエネルギー密度を記録し、120mW相当の出力を得た。得られた力(100N以上)と変位量(20mm以上)は既存の発電機構との互換性があり、熱から動力を経由して電気エネルギーへの変換が可能であることが示された。
本技術は、安価で入手しやすい天然ゴムを用いるため、大型化や出力向上が容易であり、廃熱の再利用による環境発電の実用化に貢献する可能性がある。今後は、熱交換器の性能向上や機械摩擦による損失低減などの課題に取り組み、熱の「地産地消」を実現するエネルギー変換システムの構築を目指すという(掲載誌:Joule)。